ヨガと鼻呼吸〜はいて、すって、つながって〜

「鼻からすって、鼻から吐く」



(ある日の帰り道のカモミールたち✨ りんごのような甘い香りにつつまれて思わず深呼吸しました☺️)


ヨガ教室に参加してくださった方から、どうして口ではなく、「鼻から吐く」方がいいんですか?というご質問をいただきました。

ヨガのなかにも、シッタリ(Sheetali Pranayama)やシッカリ(Sheekari Pranayama)が「口から吐く」呼吸法としてあります。これらは体温をさげてくれるものになります。犬も基本的に鼻呼吸をしていますが、体温をさげるために舌を出していることがありますよね。これとよく似ているかなとおもいます。

ヨガでは基本的に「鼻から」すって、「鼻から」吐きます(鼻がつまっている方は、口呼吸で大丈夫です)。

鼻をつかう大きな理由のひとつは、「息を長く制御しながら深くゆっくり」吐けるようになるためです。ウジャイ呼吸(Ujjai Pranayama)などはとくに、口を閉じていないと練習ができません。ブラーマリ呼吸(Bhramari Pranayama)も、口を閉じないと音を出すことができません。

呼吸法(プラナヤーマ)は、自律神経に直接負荷をかけてきます。その分、効果も大きく、即効性も感じやすいとおもいますが、やはり注意が必要です。自分のからだとちゃんとつながっていないと知らないうちにやりすぎてしまい、かえって害をおよぼします。インドの先生たちからも、この点についてはとくに念入りに指導を受けました。インドでも、呼吸法をやりすぎて体調がおかしくなってしまった方がたくさんいるそうです。また、競争意識の方がまさってしまい、長く息を維持することだけにとらわれてしまうこともあります。そうなると、本来のヨガ、まずは自分自身をつないでいくことから、かえって遠ざかってしまい、自尊心やエゴが増大してしまいます。

今はヨガの動画がたくさん出まわっていて手軽に練習ができますが、呼吸法においてはとくに、まずはちゃんと学んだ先生から直接習うことを強くおすすめします。自分がおもっている以上に、頭は結構かたくて(!笑)、自分の限界がわからないままつきすすんでしまうことがあるからです。そして、きちんと段階をふんで練習した方がよいものがたくさんあります。

わたしも普段のクラスでは、かなり慎重に、呼吸法をその日取り入れるかどうか様子をみながら決めています。まずは意識を呼吸に向けたり、だれでも無理なく練習できる深呼吸だけでも、十分効果があると感じています。



そして、「鼻からすって、鼻から吐く」ことは、このほかにもたくさんの素晴らしいことをもたらしてくれます。

そもそも鼻は、「呼吸のための器官」です。ほかの動物たちも、赤ちゃんも、みんな口を閉じて鼻で呼吸をしています。

鼻には、呼吸のための実にさまざまな工夫とメカニズムがあるそうです。すう息と、吐く息は、同じ鼻の穴でも、通り道が少しちがいます(くわしくは下記の参考文献をご参照ください)。ちゃんとそれぞれの通り道が鼻のなかに用意されているのです。また、鼻からすうことで、空気があたためられて体内にとりこまれます。外気が冷たい日でも、からだにとってちょうどいい温度になるのです。とくに冷え性の方は、まずは呼吸をみなおしてみてはいかがでしょうか。

また、空気が鼻をとおることで、雑菌や花粉、ハウスダスト、いろいろなものが濾過(ろか)され、熱がこもりがちな脳も冷やしてくれます(その結果、脳もしゃっきり働きます)。

「鼻から吐く」ことも、生理学的な見地から大変おすすめです。口から吐くと、口が乾燥してしまいます(ドライマウス、口内炎などさまざまなお口のトラブルから、色々な体の不調につながることがあります)。細菌やウイルスは湿度が苦手で、乾燥している方を好みます。鼻の粘膜は、広げると実に新聞紙1枚分もの(!)面積があるそうです。これをおりたたみ、ヒダ状になっているのが鼻の粘膜。鼻から呼吸することで、からだが乾燥するのも防ぎ、うるおいを保ってくれます。

そして、これはヨガの呼吸法とも連動してきますが、鼻呼吸によって横隔膜をしっかりつかい、深い呼吸ができるようになってきます。普段、何気なく呼吸をしていますが、「右の鼻を特につかって呼吸」している時間と、「左の鼻を特につかって呼吸」している時間が、1日のなかで交互におとずれています(両方をつかっている時間もあります)。つまり、だいたいの時間帯は、片方の鼻から吸って吐いている状態です。そうなると、口呼吸に比べ、しっかりと息を吸わないと空気が入ってきません。これを「気道抵抗」というそうですが、鼻呼吸によって、自然と横隔膜をしっかりつかえるようになるのです。そうすると、深い呼吸が自然と練習できるようになります。口呼吸はたしかに楽なのですが、呼吸は浅く、速くなりがちです。

呼吸は毎日おこなっているものです。ここを少し意識するだけでも、よりすこやかに毎日を送ることにつながるのかなとおもいます。

下に参考文献であげた、今井先生の「あいうべ体操」や、「舌が本来あるべき場所」のお話もとても興味深かったです。図書館にも本があるとおもいますので、興味のある方は手にとってみてはいかがでしょうか。



先日、新緑の森をひとり、自由に歩きました。



すがすがしい森の空気のなか、シャガのお花が咲き乱れ、光とたわむれていました。



呼吸は自然と深くなり、静けさがからだのなかにひろがっていきます。

ありとあらゆる、いろいろな呼吸法があります。しかし、美しい自然のなかで、無理なくひろがる深い呼吸とやすらぎは、やっぱり何ものにも代えがたいです。ほんのちょっぴり「鼻」は意識しながら、たのしい散歩にでかけて、新緑のみずみずしい空気をたっぷりからだにとりいれたいですね。


(まるで手をひろげて挨拶しているような、かわいいシャガさん☺️♡)


参考文献

Swami Satyananda Saraswati、『A Systematic Course in the Ancient Tantric Techniques of Yoga and Kriya』(Yoga Publications Trust、1981)

スワミ・クバラヤーナンダ『ヨーガ・セラピー』(春秋社、1995)

今井一彰(みらいクリニック院長)『鼻呼吸なら薬はいらない』(新潮社、2014)

今井一彰『呼吸にまつわる ふか〜い話:息育のすすめ』(不知火書房、2015)

ジェームズ・ネスター『BREATH 呼吸の科学』(早川書房、2022)



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